資金の悩み

③NPO4つの資金源のメリット・デメリットと活かし方

こんにちは、ヤマサキです。

『はじめての資金調達』シリーズ第3回は、NPO4つの資金源それぞれの特徴と活かし方についてお伝えします。

4つの資金源とは、『寄附』『会費』『助成金』『事業収入』であり、NPOはこの財源のどれか一つに偏ることなく、バランスの取れた財源戦略を立てていく必要があります。

なぜ一つに偏ることが危険なのかも含めて、ひとつひとつのメリット・デメリット(リスク)を挙げていきますね。

事業収入のメリット

  • その団体の独自資源なので、行政や助成元の状況に左右されることがない。
  • 使い道が自由なので、事業収入が増えると経営の独立性が高まる。
  • スタッフの技能や、ビジネス力や企画力が向上する。
  • 事業(モノの購入やサービス提供)を通じて、潜在的支援者が増加する。

事業収入のデメリット・リスク

  • 民間の営利企業や行政との競合により、採算割れを起こすことがある。
  • 事業形態によっては課税額が多くなる。
  • 事業収入のイメージが強くなりすぎると、他財源の獲得にマイナスイメージをもたらすリスクがある。
  • 事業収入に熱心になりすぎて、ミッションとの不協和音を起こすリスクがある。
  • 「活動をあまりビジネス寄りにしたくない」というメンバーが出てくることがよくある。

NPOが事業収入を活かすためには?

  • 事前に競合調査をし、勝てない分野での事業はやらない。
  • 『事業収入をあげることが団体の継続性につながり、ミッションに貢献する』という内部メンバー間の合意形成プロセスをしっかり取る。
  • 事業について『その事業を行うこと(モノの購入やサービス提供)がビジョンを叶える』とイメージできる打ち出し方を行う。

助成金のメリット

  • 大きな金額がまとめて入る。
  • 新しい事業をスタートする際のリスクを軽減してくれる。
  • 助成元によっては、資金面以外にもさまざまな支援が得られることがある。
  • 助成金を受けているということが、団体の信用力の補完になる。

助成金のデメリット・リスク

  • 助成元により支払いサイトが決まっている。(事業終了時の後払いなど)
  • 人件費に使えないものが多く、助成金事業を行うことで却っていわゆる『助成金貧乏』、経営が苦しくなる場合もある。
  • 使途が制限されており、自由な発想で使うことができない。
  • 助成金事業を続けることで、助成金に依存しがち(独立性が失われがち)になるリスクが高い。

NPOが助成金を活かすためには?

  • 助成金を得ている間に、その資金を活かして中長期的に採算性のある事業モデルを確立させる。
  • 助成金を使う事業は、その信用力や資金規模を活かして、認知や影響力を上げられるものにする。(中長期的な効果を狙う)
  • 助成金以外の財源を確保するのは必須。

寄附・会費のメリット

  • 寄附者や会員に支えられている団体として社会的信用力が増す。(助成金審査での高評価や、認定制度にもつながる)
  • 寄附者や会員などの支援者がいることで、事業のレバレッジや効率性が上がり、新規事業にも挑戦しやすくなる。
  • 寄附や会員を募集する行為を通して、団体の理念やストーリーが整理され、存在感や発信力が向上する。
  • 『寄附を募っている団体』というイメージが浸透すると、時に大口の支援を受けられる可能性がある。

寄附・会費のデメリット・リスク

  • 寄附や会員を増やし、維持するには時間と手間がかかる。
  • 寄附金額や人数が増えるほど、しっかりした情報管理体制が必要になる。
  • 定期的な報告を行うなどの一貫したコミュニケーション戦略を持っていないと、却って団体の評判を下げるリスクがある。
  • 議決権を持つ正会員(法律上の社員)の増加には経営リスクがある。

NPOが寄附・会費を活かすためには?

  • 寄附や会員集めについては思いつきで行わず、長期的な戦略を立てた上で実行する。
  • 寄附者や会員の情報管理が代表だけの仕事にならないように、はじめから役割分担を明確にしておき、寄附集めについてはできるだけ関わるメンバーを増やして総力戦で行う。
  • 正会員の増加は慎重に行う。(表向きには募集しないなど)

NPOが資金調達を行うために欠かせないたった1つの条件は?

これまで4つの資金源それぞれの特徴を書いてきました。

さて、この4つの共通点はなんでしょう??

それは・・・

どの資金源も、「相手の心を動かす」ことによって得られるものだということです。

事業収入なら、その受益者。助成金なら、助成元。そして寄附や会費なら、その支援者の心を動かすことができて初めてその資金は得ることができます。

具体的には、あなたのNPOがめざすビジョン(理想の社会)や、これまで生み出してきた価値、または事業の受益者のストーリーなどを通じて、活動に「共感する」「購入する」「支援する」層を増やしていくプロセスになります。

次回は、このプロセスについて書きますね!お楽しみに!

山崎 梨紗

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